ネットオークションでは様々な配送方法を利用しますが、中には「信書は送ることが出来ません」と書かれているものがあります。
信書とはいったい・・・?
目にする機会は多いけれども、しっかり理解している人は少ないと思います。
というのも、信書であるかどうかが物や状況によって変わってくることもあり、定義が少し曖昧なのです。
しかし、知らないからといって指定された方法以外で信書を送ってしまうと、運送事業者だけでなく、発送した当人も「郵便法違反」として罰せられることがあります。
ネットオークションで信書を送ることは全くない、とは言い切れませんので、この機会にしっかり覚えてしまいましょう!
というわけで今回は、郵便法違反にならないために信書とはどういったものなのか、ちょっとお勉強をしましょう!
信書とは?
総務省の信書のガイドラインを見てみましょう。
「信書」とは、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と郵便法及び信書便法に規定されています。
「特定の受取人」とは、差出人がその意思又は事実の通知を受ける者として特に定めた者です。
「意思を表示し、又は事実を通知する」とは、差出人の考えや思いを表現し、又は現実に起こりもしくは存在する事柄等の事実を伝えることです。
「文書」とは、文字、記号、符号等人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物のことです(電磁的記録物を送付しても信書の送達には該当しません。)。
これが信書の定義です。
これだけで理解が出来たら今回の記事は読まなくてOKですが・・・ちょっとわかりにくい説明ですね。
どういったものが信書に該当するのか、わかりやすい具体例も見てみましょう。
信書に該当するもの・しないものの具体例
こちらも総務省の信書のガイドラインで確認しましょう。
信書に該当する文書
■書状
■請求書の類
【類例】納品書、領収書、見積書、願書、申込書、申請書、申告書、依頼書、契約書、照会書、回答書、承諾書、◇レセプト(診療報酬明細書等)、◇推薦書、◇注文書、◇年金に関する通知書・申告書、◇確定申告書、◇給与支払報告書
■会議招集通知の類
【類例】 結婚式等の招待状、業務を報告する文書
■許可書の類
【類例】 免許証、認定書、表彰状
※カード形状の資格の認定書などを含みます。
■証明書の類
【類例】印鑑証明書、納税証明書、戸籍謄本、住民票の写し ◇健康保険証、◇登記簿謄本、◇車検証、◇履歴書、◇給与支払明細書、◇産業廃棄物管理票、◇保険証券、◇振込証明書、◇輸出証明書、◇健康診断結果通知書・消防設備点検表・調査報告書・検査成績票・商品の品質証明書その他の点検・調査・検査などの結果を通知する文書
■ダイレクトメール
- 文書自体に受取人が記載されている文書
- 商品の購入等利用関係、契約関係等特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている文書
信書に該当しない文書
■書籍の類
【類例】新聞、雑誌、会報、会誌、手帳、カレンダー、ポスター、◇講習会配布資料、◇作文、◇研究論文、◇卒業論文、◇裁判記録、◇図面、◇設計図書
■カタログ
■小切手の類
【類例】 手形、株券、◇為替証書
■プリペイドカードの類
【類例】 商品券、図書券、◇プリントアウトした電子チケット
■乗車券の類
【類例】 航空券、定期券、入場券
■クレジットカードの類
【類例】 キャッシュカード、ローンカード
■会員カードの類
【類例】 入会証、ポイントカード、マイレージカード
■ダイレクトメール
- 専ら街頭における配布や新聞折り込みを前提として作成されるチラシのようなもの
- 専ら店頭における配布を前提として作成されるパンフレットやリーフレットのようなもの
■その他
◇説明書の類(市販の食品・医薬品・家庭用又は事業用の機器・ソフトウェアなどの取扱説明書・解説書・仕様書、定款、約款、目論見書)、◇求人票、◇配送伝票、◇名刺、◇パスポート、◇振込用紙、◇出勤簿、◇ナンバープレート
具体例を見ると、どんなものが信書か、そうでないかがわかりやすくて良いですね。
例をいくつか見てみましょう。
書籍の類の新聞や雑誌などは、特定の誰かに見てもらうためのものではなく、不特定多数の人に見られます。多くの人に広く知ってもらいたい、という目的が含まれています。
これは信書定義の「特定の受取人」には該当しません。
または、プリペイドカードの類の商品券、図書券とありますが、特定の誰かに送ったところで差出人の意思や考えを、券自体で表現しているとは言えません。
これも同じように、定義の「意思を表示し、又は事実を通知する」にはあたりません。
仮に、信書に該当する納品書や領収書を送りたい場合に、CDやDVD、USBメモリなどといった電磁的記録物に内容を記録して発送しても問題ありません。
パッと一目見ても「これはCDだ」「USBメモリだ」くらいしかわからず、「文書」ではないため発送が可能なのです。
指定の方法以外で信書を送ると郵便法違反になる
私自身の信書についての知識は、調べ始めるまでほとんどありませんでした。
手紙は信書にあたる、くらいの認識しかなく、知識がないというのは怖いですね。
しかし、たとえ差出人に知識がなくとも、禁止されている方法で信書を送ることは郵便法違反になります。
もし、郵便法に違反してしまうと、郵便法76条1項の罰則規定より、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に科せられます。
しかも、運送事業者だけでなく、送り主も罰せられてしまうのです。
誰でも、いつの間にか、知らないうちに郵便法違反をしている可能性があります。
クロネコメール便というサービスをご存じでしょうか?
2015年3月31日までヤマト運輸が行っていた配送サービスで、低価格で発送でき、追跡番号もついている優れた配送方法として、多くのネットオークション利用者に使われていました。
しかし、信書がどういったものか曖昧なまま、利用者が信書に該当する文書を発送して、郵便法違反が発生したものが2009年から2013年度で8件ありました。
この結果を重く見て、「利用者が罪に問われるリスクを放置することはできない」ためクロネコメール便を廃止することにした、とヤマト運輸は発表しました。
信書の定義の曖昧さ、利用者の知識の欠如、そして信書規制の改革も進まないために、一つの配送サービスは廃止せざるを得なくなった、というケースもあるのです。
信書を送ることが出来る配送方法とは?
- 日本郵便株式会社
- 信書便事業者
- 総務大臣からの許可を得ている民間事業者
のみ、信書の発送が出来ます。
個人として信書を発送したい場合は、日本郵便の配送方法を利用すると良いでしょう。
しかし、信書を発送できる方法は決まっており、
- 定形郵便
- 定形外郵便
- レターパック
- 国際スピード郵便(EMS)
- スマートレター
以上の5つでのみ、信書の発送が出来ます。
ゆうパック、ゆうメール、ゆうパケット、ポスパケット、クリックポスト以外の配送方法で信書の発送ができると覚えても問題ありません。
信書を送る際は充分に気をつけましょう
いかがだったでしょうか?
信書について調べているうちに、知らないって怖い!と思うようになりました。
配送業者も信書発送ついての注意喚起はしていますが、全ての人が信書の知識を持つまでには至りません。やはり、知らない人は本当に知らなくて、知る機会すらないこともあります。
私は、たまたま今回こうして調べることがあり、信書について知ることが出来たので運が良かったのですが、中には知らずに信書を送ってしまって郵便法違反をしていた、という方もいらっしゃいます。
今まで知らなくても大丈夫だったから、これからも大丈夫とはとても思えません。
誰しも少なからず信書を送る機会があるので、自分の身は自分で守るためにも、正しい知識を身につけましょう!今後も、私の信書に対する知識は深くなりそうです。